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長尾謙一郎『PUNK』1巻

PUNK 1 (ジェッツコミックス)

PUNK 1 (ジェッツコミックス)


長尾謙一郎さんの新作は、自らをモデルとした(と思われる)キャラクター・長岡謙一郎が主役の作品。彼の住むマンションに、謙一郎のファンだという謎の黒人女性(巨躯)・シモーヌが訪ねてくるところから、物語は始まります。


この、片足を狂気に突っ込んでいるのではないかと疑ってしまう世界観。『おしゃれ手帖』から一貫していますが、やはり凄みがありますな。
そのエキセントリック且つ意味不明な言動故に、読み始めた当初はシモーヌが狂気を体現しているかと思いきや、次第に周囲に奇妙な違和感が見えてくる。シモーヌの言動・振る舞いに対して、あまりにも当り前に溶け込んでしまう謙一郎の妻。第6話「白昼夢③」において一挙に揺さぶられる現実。そして第9話「ワイルド・ココナッツ③」で覆される現実。


更に言えば、その「覆された現実」もまた誰かの妄想なのではないか、狂気が産み出した産物ではないかと考えてしまうような、不条理な世界が描かれます。
巻末には、

Surely you'll gaze at your palm when you finish reading this story.


という文章があります。「あなたがこの物語を読み終えたとき、恐らく自らの掌を眺めるであろう」といったあたりでしょうか?何か自分の認識そのものを揺さぶるような作品である、というのは言い過ぎでしょうか。
何はともあれ、これほど続きが気になりつつ続きがどうなるか判らない作品は珍しいのではないかと思います。絵柄・作風共に非常にアクが強いので好き嫌いは分かれるかと思いますが、気になった方は是非読んでみてくださいな。