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時折マンガの話をします。

「季刊エス」42号に矢吹先生インタビューが収録されている

自分が定期購読している数少ない雑誌、「季刊エス」の最新42号(2013年4月号)が発売されていました。


季刊 S (エス) 2013年 04月号 [雑誌]

季刊 S (エス) 2013年 04月号 [雑誌]


季刊エス」に関してはこれまでも何回か取り上げたことがあるのですが、前の号(2013年1月号)においてリニューアルをしたという話については、しばらく前に書いた記事で言及したことがあります。


そして上のリンク先でも触れているのですが、最新42号のテーマは「女体百科」。注目せざるを得ないと言えましょう。


因みに前号からのリニューアルで、私見ではサブカルチャー寄り・アングラ寄りの方向へ若干舵を切ったという趣があるのですが、この号においてもその方向性は継続しています。
「近代ポスターの父」とも称されロートレックも影響を受けたとされるジュール・シェレ、頽廃的且つ官能的なタッチで女性の姿(裸体も多数)を描いた画家グスタフ・クリムト、巨乳女性を執拗に撮り続けたラス・メイヤーといった方々の作品を多数紹介している他、ヌード写真からピンナップ、ランジェリー、球体関節人形やフィギュアに至るまで取り上げられています。


そして「季刊エス」の特徴と言えるのが充実したインタビュー記事の数々なのですが、42号において見逃す訳にはいかないのがこれでありましょう。



(「季刊エス」2013年4月号76〜77ページ。)


矢吹健太朗さんのインタビューです。
掲載されているララやモモたちのイラストは、『To LOVEる -とらぶる- ダークネス画集 Venus』にも収録されているものですな。カラーイラストの左側には、このイラストの制作過程も併せて収録されています。メイキングを詳細に解説していくのも、「季刊エス」の特徴ですね。


To LOVEる‐とらぶる‐ダークネス画集 Venus―愛蔵版コミックス

To LOVEる‐とらぶる‐ダークネス画集 Venus―愛蔵版コミックス


インタビューならびにメイキング紹介は8ページに及びます。
To LOVEるダークネス』の制作経緯や設定のつくり方、作品を描く際に意識している点、様々な表現について、etc。
幾つか引用させて戴きます。

矢吹 週刊の時は毎週読めるしページ数も少ないから、テンポ重視で、その週ごとに完結する話を作っていたんですよ。でも月刊では縦筋になるストーリーはあった方が良いかなあ、と思って。
(中略)
そこから僕の方で「ハーレム計画」を軸にした話の流れや、各キャラの追加設定を含めた大筋のプロットを作り、シナリオの長谷見沙貴さんに渡して、お話作りに入りました。


(「季刊エス」2013年4月号76ページ。)


「無印」と「ダークネス」での、話のつくり方の違いについて。
また、長谷見沙貴さんという脚本担当の方もいる訳ですが、大筋・プロットに関しては矢吹健太朗さん自ら関与しているという点が触れられていますね。
各種設定に関しても、矢吹さんが考えている部分が少なからずあるようです。

矢吹 週刊の時は、ララとリトと春菜は自分がまずデザインを作って、その絵を見ながら設定を考えていきました。今もキャラの設定は、わりと自分主導でやっている感じですね。紙に描いたキャラ設定を、あらかじめ長谷見さんに渡してから作ってもらっているので。まぁ、相談して決める所もあるし、長谷見さんの意見も聞いたりして、ふたりでやれる強みを生かしています。


(同書78ページ。)


そして、描く際に意識している点について。

矢吹 大体、毎月二カ所はお色気シーンを入れたいと思っていて。やっぱり読者が「とらぶる」に一番求めるのはそこだから。


(同書78ページ。)


プロフェッショナルだな、と。確か大場つぐみ小畑健両氏による『バクマン。』でも、矢吹健太朗さんのプロフェッショナルぶりを絶賛している回がありましたね。
そういえば「季刊エス」の表紙を描いているのは・・・水屋美沙×水屋洋花さんでしたね、ええ。


お色気シーンについてはこんな話も。

ー本当に毎回、様々なシチュエーションでお色気シーンが入ってきて凄いです(笑)。
矢吹 もう、苦しくなってきましたよ(笑)。やっぱり構図の被りとか、このシチュエーションは前にもやったな、みたいなことはどうしても出てきてしまうので。そこで、どう以前と差別化するかは、すごく考えますよね。だから原稿の時も、そのページだけは最後まで残しておくんです。エロの神が降りてこないと描けないから(笑)。
(中略)
でも、『ダークネス』になってからは、お色気シーンだけは一枚絵の気持ちで描いている部分もあります。ページのなかで、お色気シーンのキャラを描いてからコマ割りを決めたりするので。そこをバシッと決めてから、その前後のコマ割りや流れを作っていく感じかなあ。


(同書78ページ。)


お色気シーンへの気魄みたいなものが、ひしひしと伝わってきますね。
その執念の結晶とも言える数々の表現も、紹介されています。



(同書79ページ。)


様々な、限界ギリギリを追求するかの如き描写の数々(ライターの方の情熱も伝わる解説付)。敢えて遠目の撮影をしていますので、詳細は是非雑誌、ならびに単行本をあたって確かめて戴きたいところです。
その他様々なこだわり、意識している点等が、詳細に語られています。
更には描き下ろしの、一糸纏わぬヤミのイラスト(制作過程付)も収録されていたりします。



この他にも、アニメ放映が近付いている『惡の華』の作者・押見修造さんへのインタビューや、森美術館での個展が大きな話題を呼んでいる会田誠さんとイラストレーター・中村佑介さんとの対談とか、非常に読み応えのある内容です。
ご興味のある方は是非ご一読を。



【余談1】
季刊エス」ではほぼ毎号、複数名の方にインタビューを行っています。そのうちの一人は(この号では)勿論矢吹健太朗さんだった訳ですが、エロマンガ・イラストで知られる石恵さんもその一人。「ホットミルク」とか「コミックゼロス」の表紙を描かれたり、To LOVEる』の二次創作を描いたりしておられますね。


しばらく前に、矢吹健太朗さんが石恵さんとお友達になられたという話がネットで少々話題になったことがありましたが、この特集が縁だったのかもしれませんな。

【余談2】
矢吹健太朗さんのインタビューでこんな発言が。

ーちなみに矢吹さんが好きなパーツはあるんですか?
矢吹 まぁ、胸やお尻は普通ですけど、結構ワキにはこだわってますね。ワキをエロく描けるマンガ家さんは全体的に上手いイメージがあります。


(同書80ページ。)


5年近く前に『To LOVEる』の腋の描写の素晴らしさを書いた俺の考えは間違っていなかった・・・!と改めて認識した次第です。

といったところで、本日はこのあたりにて。