文字・オノマトペが実体を伴っている作品例
1つ前の記事で、津田雅美さんの『ヒノコ』において「文字が実体として描かれている」ような例を出しました。
しかしながら、当然のことではありますが、こういった表現にも先例はあります。
という訳で、幾つか実例を挙げてみます。
(「別冊宝島EX マンガの描き方」131ページ。)
園山俊二さんの『ギャートルズ』ですね。*1
だだっ広い平野を舞台に、何ともカラッとした雰囲気で描かれる原始生活。ナンセンスギャグの名作として知られる作品ですね。
上の画像でも描かれるような叫び声が大きな特徴の1つでもある訳ですが、その叫び声が崩れ、ガラガラと落下してくるのをよけている女性の姿が描かれています。
(藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん』12巻398ページ。)
続けては『ドラえもん』から。
声が固まるひみつ道具「コエカタマリン」を使い、声のかたまりに乗って移動しようとするのび太。自分の声には追いつけないので、ママの怒鳴り声に乗る場面です。
その直後のコマ。空を飛ぶ「ノビタ」の文字が実にシュールで良い。
やはり藤子先生は天才だと思います。
比較的近作から。『夏目友人帳』になります。
夏目が妖怪に、「友人帳」に記載された名前を返す場面ですね。紙に記された名前が浮かび上がり、妖怪の許へ戻る様子が、文字が流れるような表現が、読んでいて非常に心地良いのですよね。
(荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』31巻78ページ。)
やはりこれを挙げない訳にはいきますまい。
『ジョジョ』第4部、広瀬康一スタンド「エコーズ Act.1」の、音を操る能力。
ほんらいは存在しない、形はない筈の「音」(そしてそれを表現手段であるオノマトペ)を目に視えるものとして表現した例です。天才ですな。
と、簡単ではありますがこのくらいで。
他にも例はあるかと思いますので、それを探してみるのも愉しいかもしれませんね。
*1:単行本も持っているのですが、どこにあるのか探し出せなかったので、「マンガの描き方」からの転載という形を取らせて戴きました。