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帝国データバンクの「出版業界 2012年度決算調査」の内容が興味深かった(追記あり)

先日、このようなページ・ならびに資料を見付けました。


帝国データバンクによる、出版業界の動向をまとめた調査報告です。
この内容が、なかなかに興味深い内容だったので、かいつまんでご紹介しておきたいと思います(詳細はリンク先の資料をご覧戴ければと)。


調査対象となっているのは、出版社(654社)・取次業者(212社)・書店経営業者(301社)の合計1167社です。


やはり全体的な傾向として、市場の縮小は止まっていないとのこと。
出版社では上位10社中7社、取次では上位8社中6社、書店経営業者では上位10社中6社が減収となっています。2期連続で減収となっているところも、少なからぬ割合を占めています。
全体としては、出版社の359社(54.9%)・取次業者は133社(62.7%)・書店経営業者は207社(68.8%)が減収。実に厳しい現状が見て取れます。


そのいっぽうで、損益については前年を上回っている企業が少なからぬ割合を占めている、というのも特徴です。赤字部門の削減とか、諸々のコスト削減によって黒字に持ってきている模様。出版社・取次の8割くらいは黒字とのことで、書店経営業者も7割が黒字のようです。
しかしながら書店の場合、小規模の書店だと赤字が連続している割合が大規模書店に比べ高く、小規模書店は損益面でも厳しい状況が続いているとのこと。


出版においては、「売れる本」「売れない本」の二極化が進んでいるとの指摘も。
これは、今年だと『進撃の巨人』を例に挙げると判り易いかもしれませんね。


進撃の巨人(10) (講談社コミックス)

進撃の巨人(10) (講談社コミックス)


この10巻は、アニメ放映開始とほぼ同じ頃に発売されました。
その際、単行本の帯には「累計1200万部突破!」みたいな惹句が書かれていました。そしてその直後に、どこの書店でも品切という状態に。品切状態は確かGW直後あたりがピークでしょうか、その後重版分が市場に出回るようになった訳ですが、次から次へと帯に記載される発行部数が増えていったのですね。「1300万部突破!」「1500万部突破!」「1900万部突破!」という具合に。


進撃の巨人(11) (講談社コミックス)

進撃の巨人(11) (講談社コミックス)


そして11巻発売の際には「2300万部突破!」になっていました。
4ヶ月で1100万部発行されたという計算ですね。単純に400円で掛けてみますと、44億円。
因みに2012年の講談社の売上は約1200億円です。今年の売上がどれくらいかはまだ判りませんが、仮にこれを基準とすると、講談社の売上の3%くらいは『進撃の巨人、という可能性が高い訳です。


と、この他にもデータを仔細に眺めると、いろいろと見えてくるものがあります。
正直なところ、決して景気の良い内容ではないですが、ご興味のある方はご一読を。
といったところで、今回はこのあたりにて。


【10月25日追記】


予想外の数のアクセス、ならびにブックマークがありました。ありがたい限りです。
ブクマコメントや twitter での反応等を踏まえ、若干追記しておきます。
進撃の巨人』が講談社の売上の3%くらいの可能性が、というくだりについてです。


まず、10〜11巻発売までの4ヶ月間(10月28日修正:×3ヶ月→○4ヶ月)で1100万部発行した訳ですが、それを年間(昨年度の売上ですが)で割るのはおかしいのでは、という意見がありました。確かにそのとおりですね。
因みに最新号の「別冊少年マガジン」において、2500万部突破との記載があるそうです。11巻発行から約2ヶ月で200万部。さすがにGW期に比べると勢いは落ちています(とは言っても相当なものですが)。そこからの大雑把な予想ですが、年間での売上は1500〜1700くらいになるのかな、と。暫定的に間を取って、1600万としておきましょうか。


そして、取次・書店の取り分を考慮にいれるのを忘れていました。
これまた正確な数値は判らないものの、恐らく合計で40%くらいは取次・書店には配分されるであろうと。仮に60%を出版社の取り分としておきます。


その数値で改めて計算してみます。
1600万×400で、64億円。その60%で、38.4億円。
結果として、やはり全体の3%くらいでしょうか。まぁ、あくまで大雑把な予想ではあるのでそのあたりはご了承戴ければと思います。