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時折マンガの話をします。

表紙の奇麗なマンガ・その3(続き)

では続きを。

前回の最後が宗教を題材にした『祝福王』でしたが、次に挙げるのもある程度関連しています。



坂口尚さんの『あっかんべェ一休』です。
背後に描かれるのは、蜘蛛の化物のシルエットと短歌のみです。全体的に暗いトーンで統一されています。しかし目を離せなくなるような美しさを持っているではないですか。
タイトルから判るように、一休宗純の八十八年の生涯を描いたものです。大量の資料に裏打ちされつつも単なる伝記ではなく、坂口尚さんの思想或いは価値観が余すことなく込められている名作です。


残念なのは、坂口尚さんの知名度があまり高くないようだ、ということです。
個人的には、マンガ史上屈指の才能を持っていた人だと思うのですよね。『石の花』とか『VERSION』も類い稀な傑作なのになぁ・・・。作品を発表した雑誌とか、キャラクターに頼らない作風とかが原因なのかな?
この作品を描いた直後にお亡くなりになってしまったのが非常に惜しまれます。


坂口作品についてはいつかちゃんと文章にまとめたいとは思っているものの、まだ力不足を感じています。



最後を飾るのは、こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』です。
映画化もされたし、知っている方も多いかと思います。
多くを語るのは無粋かと。静かな哀しみと、大きな感動が伝わってくる作品です。
ちょっとした台詞・独白やさりげない仕草にもしっかりとした意味が込められています。100ページほどの分量ながら伏線も見事に回収されていて、彫琢を重ねて磨きあげた内容であることが判ります。
作者さんの強い想いを感じずにはいられません(この作品の主な舞台は広島ですが、こうの史代さんの出身もまた広島です)。繰り返し読んで欲しい作品だと思いますね。


とりあえずはこんなところで一区切り。忘れた頃にまたやるかもしれませんよ。