マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

裸族と変態と女子高生の甘い囁きが聴こえる:ドラマCD版『ドントクライ、ガール♥』

昨年最も脚光を浴びたマンガ家の一人として、ヤマシタトモコさんに名前を挙げることができるでしょう。
元々BLで幾つもの名作を描かれていた方ですが、一昨年あたりから一般誌にも進出を始めました。そして昨年末に出版された『このマンガがすごい!2011』の「オンナ編」において、1位・2位を独占するという快挙を成し遂げています。それに加え、「アフタヌーン」でも社交ダンスを題材にした『BUTTER!!!』を連載中。ますますその活躍の幅を広げていると言えましょう。*1


さて、昨年の「このマンガがすごい!」で1位を獲得した作品は『HER』です。これも実に深い味わいのある作品でしたが、個人的には2位だった『ドントクライ、ガール♥』に軍配を挙げたい。昨年読んだ多数のマンガの中でも、トップクラスの面白さでした。


ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)

ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)


ダメ親の不手際で知人宅に居候することになった悲劇の少女・たえ子。そしてその知人・升田は、家の中では常に全裸の裸族であった・・・!
裸族の男と同居することになった清純な女子高生の、おかしな日常が描かれる作品です。
オトコでも読める少女マンガ管理人・いづきさんが詳細なレビューを書いていますので、興味のある方はそちらもご覧戴ければと思います。


そして先日、『ドントクライ、ガール♥』のドラマCDが発売されました。


Dramatic CD Collection ドントクライ、ガール(ハート)

Dramatic CD Collection ドントクライ、ガール(ハート)


キャストの説明をまずしておきましょう。


たえ子を演ずるは小林ゆうさんです。これまでの経歴としては『ネギま!』の刹那とか『さよなら絶望先生』の木村カエレとか『ひぐらしのなく頃に』の北条悟史とかがありますが、むしろエキセントリックな言動や、見る者を不安な気分にさせる天才的な画力とかのほうが有名でしょうか。


裸族・升田を演ずるは森久保祥太郎さん。自分のようなオッサンにはオーフェンの声の人とかだったりしますが、ちょっと乙女な視線から捉えれば、『薄桜鬼』の沖田総司役をしていたりしますな。


升田の友人・陣内(変態)を演ずるは諏訪部順一さん。『テニスの王子様』の跡部様が有名でしょうか。



そして実際に聴いてみての感想ですが、マンガとドラマCDという媒体の違いから生じる問題点に巧く対処しながらも、原作の台詞をほぼ忠実に再現していました。面白かったです。以下、少々それらの点に触れつつ、感想のようなものを書いてみようかと思います。



まず上で触れた、「マンガとドラマCDという媒体の違いから生じる問題点」というものについて。これは言わずもがなのことですが、マンガは「絵と文字」を用いる媒体であるのに対し、ドラマCDは「声と音楽」を用いる媒体であるという違いです。



ヤマシタトモコドントクライ、ガール♥』17ページ。)

2コマ前では、升田は普通に服を着ています。たえ子・陣内と一緒に家に戻り、家に帰ってきてたえ子が振り向いたとき、升田は既に全裸になっています。それを見たたえ子が「其疾如風(そのはやきことかぜのごとし)!!」と心の中で叫んでいる、という場面です。
しかしドラマCDの場合、単純に「其疾如風!!」では何が起こっているのか判らない訳です。「家に入って数秒後に振り返ったら、既に全裸になっていた」という描写を声で伝える必要があります。




(同書22〜23ページ。)


陣内がお土産で持ってきた、男性器型のマドレーヌ「マラドレーヌ」(バカだ!)。これも同様に、上のように画像があれば一目瞭然でありますが、それが無い場合、「陣内が持ってきたお土産のお菓子を見たところ、男性器を象っていた」という情報が事前に判らない限り、マラドレーヌが何なのか判らなくなります。


ドラマCD版では、これら「絵が無いと判らない情報」に関して、台詞が付け加えられています。マンガに比べると説明的になってしまう点は否めませんが、全体の流れを損なわないように組み込まれていると思います。
ヤマシタトモコさんの作品の魅力のひとつとして、卓越した言語感覚と台詞回しの妙を挙げることができるかと思いますが、さしたる違和感もなくそれを堪能できるのではないかと考える次第です。


そのような若干の台詞の追加を除けば、原作をほぼ完璧に再現。




(同書24〜25ページ。)

「...なんとなく
気が合いそうだな
君...さ」


「排便を途中でやめて
ズボンはいて外出してみた
ことなんてある?」


「...風呂の水圧で
つい脱糞した
ことならあるぜ」


升田・陣内が初めて会った際の会話です。イケメン2人による、あまりにも頭の悪い会話(賛辞)。これも完璧に再現されている!沖田総司跡部様の声で!


その他にもあんな台詞やこんな台詞も、ちゃんと再現されている。
そして、単行本巻末に収録されている描き下ろし「Don't Laugh, my Girl♡」は2ページの掌編ですが、ドラマCD版では大幅に台詞が書き加えられて、殆ど新作に近い内容となっています。原作を面白いと感じた方、或いはたえ子と升田の「その後」に興味のある方は、こちらを聴いてみるのも一興かと思います。


という訳で、本日はこのあたりにて。

*1:今年の3月に卵巣の病気で入院をしたとのことですが、退院はされている模様。