『現代視覚文化研究 vol.2』:内容的には同人誌?
実際に買ったのは先月末ですが、読む本が山積みだったり何かと忙しかったりでなかなか読めずにいました。
『現代視覚文化研究 vol.2』です。
- 出版社/メーカー: 三才ブックス
- 発売日: 2008/01/31
- メディア: 単行本
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一言で感想を言えば、良くも悪くも同人誌的・2ch的なノリの本だな、と。
以下に簡単な内容説明をしつつ、もう少し感想を書いてみます。
前書き部分に「気鋭の筆者に『いま一番おもしろいこと」について語っていただきました」とありますが、やはりそれが原因なのか、扱っている内容に偏りがあるのは致し方ないことなのでしょう。
残念なのは、ニコニコ動画や初音ミクについての記事が皆無に近かったこと。
冒頭の「2007年どきどき☆メモリアル」(去年1年のオタク文化年表みたいなもの)で僅かに触れられているのみです。
自分はそれほどニコニコ動画を観ないので、どういう流れでこれほどまでのモンスターサイトになったかが大雑把にしか判りません。まとまった文章でそれらについて読みたいなと思っていた訳です。
「アキバ系カルチャー読本」を謳うからには、昨年急激な成長・普及を遂げたニコニコ動画と、それにより一躍知名度を上げた初音ミクは取り上げられているかなと思っていたので少々肩すかしを喰らった感があります。
もっともこれは無いものねだりですし、まとまった記事にするには時間が足りなかったのかもしれません。
あと最初のほうに「同人誌的・2ch的なノリ」と書きましたが、それを感じたのは以下に挙げる箇所です。
まずは第2特集「このマンガもすごい!」の幾つかの項目。
書いてしまいますと、「このぱんつがすごい!」「このマンガがはいてない!」「この童貞マンガがすごい!」「このホモマンガがすごい!」「この触手マンガがすごい!」あたりですか。
ネタ的要素があると言いますかね。
且つ相当に一点突破なセレクションなので・・・はっきり言えばエロ要素も少なからずなのでかなり読者を限定しているのは確かです。軽い気持ちで別ジャンルに手を出してみようかとか考える人をとりあえず振るい落とそうと言わんばかりですね。
もうひとつは、「アニメ会の現代視覚文化研究局」というやつ。
アニメ会ってのは、隠れオタの芸人さんが集まった集団とのことです。この方面はとかく疎いのでまったく知りませんでしたが、ライブとかもやっているとのこと。
で、そのアニメ会の人たちがいろいろとネタを披露している訳です。
「オタクすべらない話」とか「こんな『エヴァ』最終回はイヤだ!」とか。
これ、何らかのオタク物件が好きな人たちが集まって、それを題材に何か作るという点でかなり同人誌的ではないかと。
あと何より、付録が同人誌ですからね。
大手ニュースサイトのかーずSPさん責任編集による『まじカル!2008』です。
1冊まるごとヤンデレ特集というこれまた尖り過ぎた内容です。
昨年大いに話題になった『School Days』特集に始まり、メインキャストや監督へのインタビュー、ヤンデレ基礎知識の解説に更には『ひぐらしのなく頃に』の作者である竜騎士07さんへのインタビューと、とても同人誌とは思えぬ豪華さ。
自分にとってヤンデレってかなり微妙な位置付けではあるんですが、それでも非常に充実した、資料的価値も高いものだと思います。ヤンデレに興味がある方はこれだけでも買う価値はあるのではないかと。
詰まるところ、相当に読者を選ぶ本であることは間違いないです。
編集サイドでもそれは充分に判っておられるようですし、そのリスクを負ったうえでこういう偏った編集をしたのでしょう。
ハマる人にはガッチリとハマるかと思います。
僕が読んでいて興味深かったのは、「このマンガも〜」の中では「この劇画誌マンガがすごい!」「このマンガが売れなりたい!」の2つ。
個人的にかなり推している『任侠沈没』や『吉田家のちすじ』が取り上げられていたのが嬉しいですね。・・・この本の主要読者層の方々からはズレているような気もしますが。(;^ω^)
あと、「『秋葉原おたくの皆さん』がちょっと心配です。」という記事が良かったですね。
麻生氏=親オタク、マスコミ=反オタクのような単純化された思考や、オタク文化の隆盛が今後も無条件で続くという根拠の無い確信に対して警鐘を鳴らす文章です。
この本自体、存分に春を満喫しているかのような雰囲気があるようにも感じます。
そんななか、このような真摯な記事があると安心しますね。
さて随分長くなったので、このあたりにて。
しかし文章は長くなるわ巧く纏まらないわで、我ながら困りますね。