『邪宗まんが道』を読みました
松永豊和さんと言えば、やはり『バクネヤング』が思い起こされます。
それ以降も幾つか(『エンゼルマーク』と『竜宮殿』)お描きになっていますが、ここしばらくの間お名前を聞きませんでした。
そんな中、以外な方向からお名前が出てきました。
例の雷句誠さんの原稿紛失問題に関連してはてなブックマークとかを調べていたところ、このような記事がありました。
圧倒的なまでの怒りが、こちらに伝わってくる文章です。
で、その中に『邪宗まんが道』という名前が出てきます。
これは、同掲示板も設置されているご本人の公式サイト「あの松永豊和は今」のコンテンツとして公開されている自伝的小説です。
「小説」の形態ではありますが、主人公の名前は松永豊和、つまりご本人の名前です。
それ以外の名称は変えてありますが、ある程度マンガを読んでいれば(マンガ家や作品名、出版社や雑誌、一部の編集者の名前は)推測できるものとなっています。
作者がアシスタントから出発してプロデビュー、その後の雑誌編集者との軋轢が連綿と、詳細に綴られています。編集者への猜疑・不信・怨念を叩き付けるような筆致は圧巻です。
同様のテーマの作品(これが新井英樹さんの『The World Is Mine』であることは明白です)に見た際の焦り・嫉妬といった感情も隠すことなく書き連ねています。
400字詰原稿用紙544枚という分量ながら、一気に読み切ってしまいました。読み手を引き込ませる内容となっています。
しかし心の隅に留めておくべき点もあるかと思います。
読めば判りますが、作者さんの性格もかなり独特です。
キレたときの担当編集者への応対や一方的な連載打ち切り通告等、実際に相手をした場合はほんとうに大変だろうなぁとも感じました。接する際に非常に気を遣うのは間違いないです。
やはりマンガ家に限らず、何かを創作する方というのは他の人間に口を出されるのを極端に嫌う場合が少なくないようです。
『邪宗まんが道』を読んでやはり最も気になるのは、マンガ家と編集者の関係です。
より正確に言えば、編集者はどの程度作品に関与しているのかという点ですね。
これは作者によって程度はまちまちでしょうが、それが幾分なりとも判るようなシステムが出来上がらない限り、この問題は解決しないようにも思えます。
奥付等での記載をより明確にするとか。これも最終的には両者の倫理が絡んでくる問題でもあるのですが。・・・複雑なところですね。
とりあえず、『バクネヤング』を読み返してみようかと。
- 作者: 松永豊和
- 出版社/メーカー: 小学館
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