このマンガ「も」すごい!:今年のマンガを個人的に振り返ってみる(その2)
その1の続きになります。
やはりある程度ネタバレ要素を含むので、続きは収納しておきます。
―それでは引き続き、今年印象に残っているマンガの話を。
はい。先程すっかり出すのを忘れていたのですが、三家本礼さんの『血まみれスケバンチェーンソー』を外す訳にはいきませんね。
- 作者: 三家本礼
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/03/25
- メディア: コミック
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- 作者: 三家本礼
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: コミック
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この何も考えずに読める感じ、素晴らしいですね。こう書くと貶めているように聞こえてしまうかもしれませんが、これは極めて高純度の娯楽性を保っているということです。ギーコが何ら躊躇することなく、襲い来る嘗てのクラスメート(軒並み外道)を叩き斬っていく様は痛快の二文字に尽きます。
また、キャラクターの存在感も圧倒的です。ギーコのみならず、ネロの屑っぷりだとか、爆谷の屈折した感情だとか。個人的には今後の爆谷に期待を寄せています。
さて、次いってみましょう。長谷川哲也さんの『ナポレオン −獅子の時代−』です。
- 作者: 長谷川哲也
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: コミック
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―きくちさん、毎年推していますね。
獅子の時代がやってくるまでの崇高な義務と捉えています。今年は主にエジプト・シリア遠征が描かれていましたが、アクル攻防戦におけるランヌの迫力たるや尋常ではありませんでした。とりわけ14巻147ページの、要塞と化した街に火を放ちフランス軍を嘲笑うフェリポーに、火に捲かれながら突撃するランヌの姿には鬼気迫るものがありましたね。
そういえば最近、『ナポレオン』がパチンコになっていました。間違いなく獅子の時代は近付いていると確信します。自分はパチンコはやらないのですが、きっとリーチがかかると将軍たちの姿のスロットとかが回り始めるに違いない。ダヴーの顔が3つ並ぶと「大陸軍は地上最強ォ〜ッ!!」とかCR機から叫び声が出てくる筈です。しかし逆に鼻を削がれたイブラヒム・ベイが3つ並んだりすると大変なことになったりと。
この勢いに乗って、ヴァイスシュヴァルツに参戦とかありませんかね!「ランヌ!ダヴー!マッセナ!君だけの大陸軍を造り上げろ!」とか!
―妄想を逞しくしているところ誠に申し訳ありませんが、調べた限りでは『このマンガがすごい!』で『ナポレオン』に投票した方、ひとりもいないようですよ。獅子の時代はまだ先なのでは?
( ゚д゚)...
(長谷川哲也『ナポレオン −獅子の時代−』14巻10ページ。)
―問題発言ですね。
イメージですよイメージ。参加された方には知っている方も複数名いらっしゃいますので本気ではありませんよ第一愛と平和を何よりも尊ぶこの僕が殺せとかそのような発言をする訳がないじゃありませんか冗談ですよ冗談因みに上の画像はシリア人捕虜3000人に対してナポレオンが言い放った台詞でしてシリアに対する警告・見せしめであると共にその直前で情を交わした女性・ポーラがシリア兵の手により命を落としたことに対する憤怒も込められている箇所でありまして
―コマへの言及を行ったことは立派ですが動揺が隠しきれていないので次の作品をお願いします。
動揺も何もしてはいませんが、そうですね、ここはひとつ気分をガラリと変えるという意味も込めて、矢吹健太朗さんの作品を挙げておきましょうか。『To LOVEる』と『迷い猫オーバーラン!』。
To LOVEる -とらぶる- (18) (ジャンプコミックス)
- 作者: 矢吹健太朗,長谷見沙貴
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/04/02
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- 作者: 松智洋,矢吹健太朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/04/30
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- 作者: 松智洋,矢吹健太朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/09/03
- メディア: コミック
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―これまた随分と毛色を変えましたね。そういえば『To LOVEる』の最終巻は今年発売でしたか。すっかり記憶が飛んでいました。
そうなんですよ。それにしても、矢吹先生の職人ぶりには頭が下がる思いがします。超えてはいけない一線のギリギリのところで、読者層のニーズに徹底して応えようと技巧を尽くしているという印象を受けます。本来、「何らかの制約下で如何に描くか」という試行錯誤がマンガ表現を磨き上げてきたと思いますので、そういう観点から考えれば矢吹先生はマンガ家の鑑とも言えましょう。
ここ最近はやれ健全な育成が云々とかで風当たりが厳しくなりつつあるかもしれませんが、矢吹先生にはこの道を迷わず突き進んで欲しいですね。
さて続きを。次に挙げるのは松本大洋さんの『竹光侍』です。これも今年完結した作品ですね。
竹光侍 8 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 松本大洋,永福一成
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/04/28
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―松本大洋さんですか。以前は苦手意識を持っていたという話でしたが?
ええ、まぁ食わず嫌いの偏見だというのは百も承知なのですが、松本大洋さんの作品から漂うオサレ臭・サブカル臭がどうにも苦手だったのですよ。表現力については異論ないですよ。ただ何と言いますか、ちょっとマンガに詳しいですよ的な立ち位置のミュージシャンとかが絶賛する感じ?いや偏見ですけどね。
ただ『竹光侍』にはそういった、サブカル臭は殆ど無かったように思う訳です。時代劇を描くというのは実に意外でしたが、これがまた予想以上にしっくりときていました。原作と作画が相乗効果を上げていたように感じます。巻を追うごとに、表現・描写は更に洗練されてきていたのを実感します。袖や襟巻とかが風になびく描写とか、蝶が舞う様子とか、読んでいて思わず嘆息します。
また、主役・瀬能宗一郎の宿敵と言える木久地の存在感も凄まじいものがありました。
―木久地・・・字は違いますが「きくち」ですね。
自分はあのような邪気はまとってはいませんよ。平和主義者ですから。正月にお参りする際には万札を賽銭箱に入れて世界平和を祈願するくらい
―どこかで聞いたような話ですね。そうだ、古文の
では次にいきましょう。幸村誠さんの『ヴィンランド・サガ』を挙げてみます。
- 作者: 幸村誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/06/23
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8巻では帯で壮絶なネタバレをしていた『ヴィンランド・サガ』ですが、この9巻から、正確には8巻の後半からですが、新展開に入っています。片やイングランド王としての覇道を邁進するクヌート。片や生きる目的を見失い、デンマークへと流れ着き奴隷として日々を無為に過ごしているトルフィン。この二人の道がどのように再び交差するのか、また奴隷として体験したことは、トルフィンをどのように変えていくのか、今後の展開が楽しみで仕方ないですね。刊行ペースがかなり遅いのが哀しいところです。
では10作品前後出してみたので、とりあえずはこのあたりで一区切りしておきましょうか。
―全体的に殺伐とした作品が多いですね。
そうですか?ちょっとリストにしてみますか。
- 諸星大二郎『西遊妖猿伝 西域篇』(講談社)
- 久慈光久『狼の口 ヴォルフスムント』(エンターブレイン)
- 上野顕太郎『さよならもいわずに』(エンターブレイン)
- 高橋のぼる『阿呆鳥の唄』(集英社)
- 荒川弘『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス)
- 三家本礼『血まみれスケバンチェーンソー』(エンターブレイン)
- 長谷川哲也『ナポレオン −獅子の時代−』(少年画報社)
- 矢吹健太朗『To LOVEる』『迷い猫オーバーラン!』(集英社)
- 松本大洋『竹光侍』(小学館)
- 幸村誠『ヴィンランド・サガ』(講談社)
・・・まぁ確かに矢吹先生以外は血が飛び散ったりする作品が多いかもしれませんが、どれもお薦めの作品ですよ。
―?あの、この順番って・・・
気付きましたか?ほら、先月「このマンガがすごい!」の順位、出版社だけ先に公開し(てしまっ)たサイトがあったじゃないですか?今回取り上げた順番、「オトコ編」の出版社の順位を踏襲してみました。
まぁだから何だと言われたら特に深い意味はないのですが、こういう順位のランキングとかがあってもいいのではないかと考えまして、この順番で取り上げてみました。
といったところで、今年のマンガを振り返る企画は終了とさせて戴きます。
他にも面白い作品は無数にあるのですが、それはまた別の機会ということで。
【12/22追記】
- 原稿アップ。ありがとうございます。(にっき:長谷川哲也先生のブログ)
どういうことなの・・・。