マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

衝撃のワルキューレロマンツェ

ワルキューレロマンツェ』、昨年アニメも放映されたのでご存知の方も多いかと思います。
原作はいわゆる18禁の美少女PCゲームでして、一騎打ちでの馬上槍試合「ジョスト」の名門校を舞台に、嘗て天才騎士と呼ばれながらも怪我の後遺症によりベグライター(騎士の補佐役)に転向した水野貴弘と、ジョストの大会で優勝を目指す少女騎士たちとの恋愛模様やら友情やらといったものが描かれる青春群像劇、といった趣の作品です。
キャラクターデザインを担当されているこもりけいさんの描く少女たちの姿が、凛とした清楚さと色香・妖艶さを併せ持っていて、実に良いのですな。


Pure Fetishism こもりけい画集 (MOEX)

Pure Fetishism こもりけい画集 (MOEX)


そんな『ワルキューレロマンツェ』ですが、アニメ化されたりする作品には往々にしてあることなのですが、アンソロジーってやつが出ています。二次創作をまとめて商業出版したやつですね。



自分はあまりアンソロジーって買わないほうなのですが、先日ふと手にする機会がありまして、その際にちょっと衝撃を受けてしまい買ってしまった次第です。
アンソロジーって、当然ではありますが作者さんが複数います。作者さんの一覧は裏表紙に記載されているのが殆どです。



こんな感じですね。
ほう、井ノ本リカ子さんも参加しているのか、あの柔らかい筆致で描くスィーリア様は見てみたいな、いや或いはBLで描いているようなハード路線というのも、原作のゲームも濡れ場はかなり濃厚だし合うのかもしれぬ...みたいなことを考えたりする訳です。その他には...


(´・ω・`) ...?



(´Д`;)...???


ドリヤス工場...だと...?
まぁ、買いますよね。(´ω`)


ドリヤス工場さんのことをご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんので簡単に説明しますと、水木しげるセンセイのペンタッチを用いて二次創作活動とかをされている方です。けいおん!』の同人誌とかは有名かもしれませんね。絵柄は水木センセイですが、内容はそのまま『けいおん!』。澪とかあずにゃんとかが、水木キャラな訳ですね。それが何とも奇妙な世界を創り出していて、妙に癖になる作家さんです。
そういった活動で注目され、オリジナル作品も描いています。


あやかし古書庫と少女の魅宝 第1巻 (IDコミックス REXコミックス)

あやかし古書庫と少女の魅宝 第1巻 (IDコミックス REXコミックス)


さて、そんなドリヤス工場さんが、美少女たちが織りなす、騎士道華やかなる世界を描いたらどうなるのか...と当然気になる訳で、読んでみますと、



(『TVアニメ ワルキューレロマンツェ コミックアンソロジー』76ページ。)


まぁ見事なまでに揺るぎないドリヤス工場さんの世界でした。
ジョストの大会が近付きつつも、それに対してどう接するか決めあぐねている貴弘の姿はアニメと何ら変わることなく、騎士道の残り香を感じさせる制服を身に纏い、すぐ横では甲冑を身に纏いジョストの練習をする騎士の姿があり、更に向こう側には風車まで回っているにも関わらず、何か陰気さと湿っぽさを湛えた、日本的な背景。この空気に味があるんですなぁ。


そしてこのアンソロジーに収録された作品、タイトルは「デリバリーロマンツェ」というのですが、どういう話かと言いますと、貴弘が従姉の綾子さんに頼まれてそば屋でアルバイトを始め、馬に乗って出前を届け始めたらそれが話題になり、貴弘の知り合いの少女騎士たちも馬に乗って出前を届け始め、伝統と格式を重んじるウィンフォード学園としては問題があるのでは、という話になるが、「いい息抜きになっている」としてスィーリア様が取りなしてくれる、という内容。


文字に起こすとだからどうしたみたいな内容ですが、何ともとぼけた味わいがある訳です。少なくとも、ヘレンズヒルにはそば屋があることは判りますね。




(同書81ページ。)


そばの出前を届ける貴弘。さすがは元・天才騎士だけあってか、丼を3つ重ねてもバランスを崩すことがない。



(同書83ページ。)


上のコマはノエル、下のコマは龍造寺茜ですね。
ノエルはピザの宅配、茜は寿司の出前。ヨーロッパでここまで節操なく各国の料理を出している場所があるのかどうかは判りませんが、恐らくはそれがヘレンズヒルという街に違いない。



(同書84ページ。)


何処からどう見てもベルティーユ様です。
牛乳を配達する姿にも、優雅さと気品が漂っていますね(確信)。



(同書86ページ。)


天そばをたぐるスィーリア様の高貴なる姿。
「うむ おいしい」という簡潔な言葉に、虚飾を削り抜いた清廉さが滲み出ている(ということにしておきたい)。


そして次のコマでは、馬に跨がってその場を去る貴弘の背中が描かれるのですが、枯山水にも似た枯淡の味わいと言いますかね、実に良いのですよ。
まぁ枯淡の味わいを『ワルキューレロマンツェ コミックアンソロジー』に求めている人は全読者のうちどのくらいいるのかという疑問もあるのですが、少なくとも自分にとっては、この1編が収録されていただけでも購入の価値は充分にあったかな、と。


といったところで、本日はこのあたりにて。