「季刊エス」66号収録「いのまたむつみインタビュー&表紙メイキング」で語られた富野由悠季監督が、紛う方なき富野由悠季監督だった
先日、「季刊エス」66号(2019年夏号)が発売されました。
「ストーリー&キャラクター表現の総合誌」を謳っている雑誌で、毎号何らかのテーマに沿って、マンガ家・イラストレーター・アニメーター・カメラマン等、様々なクリエイターの方々へのインタビュー記事が収録されている他、メイキングや技法解説・作画工程解説等の記事も掲載されています。投稿ページもありますね。
「季刊エス」のインタビュー記事、インタビュアーがインタビューイ(取材を受ける側)の作品を相当に読み込んでいるのが特徴でして、かなり濃い・深い内容になっていて非常に読み応えがあります。それもあって個人的に非常に好きな雑誌でして、創刊号から全部持っている数少ない雑誌だったりします。
で、66号のテーマは「ファンタジー 夢と真実」というものでして、それに基づいた記事等で構成されています。そしていちばん紙幅を割いているのが、今年画業40周年を迎える、いのまたむつみさんへのインタビューとなる訳です。いのまたむつみさんがキャラクターデザイン・作画監督を務めたOVAで、(日本における)元祖ビキニアーマーとも評されるファンタジー『幻夢戦記レダ』の Blu-ray BOX 発売にも合わせた特集ですね。
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インタビューにおいても、『レダ』に関してはもちろん、アニメーターの初期の頃からイラスト・挿絵の仕事、それらの仕事における描き方について、そして『テイルズ』シリーズや乙女ゲーム『二世の契り』等について...と、縦横無尽に語られています。
それらの中でも、とりわけ個人的に印象的だったエピソードが2つありまして。
1つ目は伝奇ファンタジー小説『宇宙皇子』のイラストを担当されていた際、マイケル・ジャクソンが来日公演をしたときに本屋を借り切って買い物をしていたら、いのまたさんの画集を気に入り「描いた人に会いたい」というので呼び出された、というものです。何から何まで規格外過ぎてコメントも難しいです。(^ω^;)
マイケル・ジャクソン本人の絵を描いて、自宅で仕上げた絵は後日(検疫で留め置かれていた)チンパンジーのバブルス君を一緒の飛行機で送られたとか。
これは当時「Newtype」でも記事になったとのことなので、知っている方は知っている、有名な話なのかもしれないですね。
そしてもうひとつが、『ブレンパワード』関連になります。
題名にも書いたのでお判りかと思いますが、富野由悠季監督絡みです。当該部分を抜粋してみます。
ー 『ブレンパワード』でメインデザインを担当されたとき、富野由悠季監督とのやりとりで印象的なことがあると聞きました。
いのまた 目の話ですよね。最初に呼ばれて行って、「僕は君の絵が嫌いなんだよ」と言われたんです(笑)。「じゃあ、なんでキャラを頼むんですか?」と言ったら、「出渕君がね、君に頼まなきゃダメだと言うんだよ」と。「なにが嫌ですか?」と聞いたら、「目が大きいでしょう?」と。それで「いや、他の人に比べたら相当小さいですよ、ほら!」と、当時は萌えキャラが流行っていたので、大きなキラキラ瞳のキャラも多くてそういうのを見てもらったんです。その後で二時間くらい話をして、何だかやることになりました(笑)。
(「季刊エス」66号 2019年夏号17ページ。)
(^ω^ )
自分はそこまで富野信者というのではなく、むしろニワカも甚だしいレベルかと思ったりもするのですが、それでもこう、富野由悠季監督だよなと思う次第です。
いきなり「僕は君の絵が嫌いなんだよ」と全力で斬り付けてくる感じも、出渕裕さんに言われたから頼むんだと説明するお茶目な様子も、「目が大きいでしょう?」というフワッとしつつも有無を言わせない感じも、その後いのまたさんが反論しつつ二時間話をしたら結局一緒に仕事をすることになるあたりも、全部良いです。
これだけでも充分価値があるかな、手許に持っておきたいなと思わせる内容です。
それ以外にも、現在『天国大魔境』絶賛連載中、石黒正数さんのインタビューも収録されているのですが、これ実は創作の根幹に関わる話じゃないか?というエピソードが饒舌に語られたりしています。ファン必読と言って差し支えないかと思います。
あと、投稿コーナーに三峯徹先生の作品が掲載されています。(^ω^ )
(確認した限りでは、53号以降毎回掲載されています。)
付け加えると、三峯先生同様に投稿の常連である、現在67歳らしい女性の存在も気になりますし、66号ではその女性の年齢よりも更に上、69歳男性の投稿、というのも存在します。
買って損はしないと思います。読もう「季刊エス」!
といったところで、本日はこのあたりにて。
ブレンパワード・スパイラルブック (Gakken mook)
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