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「月刊MdN」2018年5月号のポプテピピック特集を読んでみた

タイトルのとおりです。

コミックナタリーの記事とかで知っている方も多いかと思いますが、4月6日に発売のデザイン雑誌「月刊MdN」2018年5月号にて、「ポプテピピックの表現学」と題された60ページに及ぶ特集が組まれています。

 

 

 

やはり2018年1〜3月放映のアニメでは最も話題性に富んだ作品であったと思いますし、視聴者を唖然とさせる第一話の構成とか過剰に詰め込まれたパロディとか声優ネタあれこれとか、個人的にも愉しく視聴した作品です。原作も読んでいますけど、膨らませすぎて殆ど別物になっていながらも『ポプテピピック』的なものになっている(気がする)というのも興味深いですね。

 

で、「月刊MdN」のポプテピピック特集は、「視覚表現面に焦点を当て、魅力を解き明かしていく」*1内容となっています。

 

 

まず冒頭に、押さえておくべき必修科目として、「バラエティ性」「キャラ」「再放送」「声優」「パロディ」「クリエイター」の6項目を挙げています。まぁ「必修」というのは些か強い表現になってしまう訳ですが、やはりある程度押さえておいたほうが、視聴していて愉しいだろうなとは思います。自分の場合に置き換えてみても、声優さんへの知識・理解がもっと深ければより面白く感じられただろうなという感がありますし。

 

そして「ポプテピピック概論」として、作品プロデューサーの須藤孝太郎氏へのインタビューが為されています。

ポプテピピック』のアニメ化企画が動き始めてからの経緯とか、先述の必修科目でも挙げられていた6項目に関連して声優入れ替えやパロディ、キャラクターに関しての話がいろいろと。

須藤氏のプロデューサー気質みたいなのがインタビュー全体から滲み出ているような感覚があって興味深かったですね。作品への愛着とかではなく、透徹したビジネス視点といいますか。是非読んでみて欲しいです。

 

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(「月刊MdN」2018年5月号031ページ。)

 

因みにこちらはインタビューページに収録されている『ポプテピピック』アニメ最終話の1コマ。アニメをご覧になった方にとっては説明するまでもない、蒼井翔太(cv.蒼井翔太)登場の場面です。

自分もこの場面を観た際は、蒼井翔太さんは竹書房に誰か人質を取られたのか、それとも莫大な借金でも抱えているのか、覚えてろ竹書房...と思ったりもした訳ですが、蒼井翔太さんが登場した経緯もインタビューで触れられているのでご興味のある方は是非。

 

 

続いては「ポプテピピック演出論」として、シリーズ構成/シリーズディレクターを担当した青木純氏のインタビュー。青木氏が『ポプテピピック』に参加した経緯から作品に参加した各クリエイター選定やその基準について、ストーリーパートとショートコーナーの構成についてとか。

面白いなと思ったのは、「原作サイドから『百合っぽいニュアンスが出すぎないようにしてほしい』という希望が出てきていた」*2という話や、「僕を含めて、アニメを作る人間って放っておくと物語をシリアスな展開にしがちだと思うんです。安直なループものにしたり、セカイ系っぽくしたりして、いいことをした気になったり。」*3といった言及ですね。

 

 

次いでは「ポプテピピックキャラクター論」として、キャラクターデザイン/シリーズディレクター担当の梅木葵氏インタビュー。4コママンガである原作をアニメ化するに際しての苦労とかが語られています。ポプ子の頰の出っ張りを3DCGで再現するのに苦慮したエピソードが印象深いですね。

 

 

4つ目の「ポプテピピック辺境論」は、「ボブネミミッミ」を担当したAC部のインタビュー。自らの制作スタイルと『ポプテピピック』との距離感の話、むしろ逆のスタイルなのだという指摘には膝を打つものがありました。

 

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(前掲書072ページ。)

 

ヘルシェイク矢野のことも触れられています。

ヘルシェイク矢野に限らず、高速紙芝居そのものについての話も面白かったですね。詳細については実際に読んで戴くとしまして、とりあえず YouTube にあるAC部の高速紙芝居を1つ。

 


高速紙芝居「安全運転のしおり」

 

あと、AC部の作品を紹介するページもあるのですが、何年か前に話題になった「鳩に困ったら雨宮」ってAC部だったんだな...という驚き?もありました。٩( 'ω' )و 

 


鳩に困ったら雨宮

 

あと、「キャラクター論」と「辺境論」に挟まれるかたちで、loco2kit氏による『ポプテピピック』の論評「異なる世界線で僕らが出会った記憶の断片 ーポプ子とピピ美の友愛に関する考察」が収録されているのですが、須藤孝太郎氏と対極に位置しているような、実に「エモい」文章でして、考察でありながら次第に熱を帯びてきて恋文のようになってくる。一読の価値ありではないかと思います。

 

他にも制作会社の神風動画紹介や全話解説、マッシュアップ画像等もあり、何より60ページに及ぶ特集なので非常に読み応えのある特集です。ご興味のある方は買って損はないのではと思います。

 

 

といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:「月刊MdN」2018年5月号(VOL.289)018ページ。

*2:同書052ページ。

*3:同上。