マンガLOG収蔵庫

時折マンガの話をします。

博士、お許しください !! 『チャージマン研!』のマンガ版の存在を知らなかったことを !!

チャージマン研!のことをご存知でしょうか?


1974年(1973年説もあり)に放映されたアニメ作品です。いわゆる10分アニメでして、全65話放送。
未来の日本の小学生・泉研が「チャージマン研」に変身し、地球を守るために魔王率いるジュラル星人と戦いを繰り広げる...というストーリーです。


ただこの作品、超過密スケジュール且つ超低予算で作られたらしく、その結果として非常に「独特な」演出が随所に見受けられます。あと10分アニメ故でしょうか、展開が凝縮され過ぎていると言いますか、早い話が超展開になりやすく、結果的に唯一無二の世界観が立ち現れてしまっている作品です。


長らく忘れ去られた作品であったのですが、2000年代になってその作品世界に再注目を浴びることになり、YouTubeニコニコ動画とかを中心に(恐らく局所的に、且つ熱狂的な)話題を呼び、グッズ類がいろいろ作られたりDVDが発売されたりもしています。最近だと、 LINEスタンプも出ましたね。(^ω^;)


どんな作品かは、現物を観て戴くのが最も判りやすいかと思います。





上3つはとりわけ狂気を感じる衝撃的且つ有名な回(ニコニコ動画コメント付)ですが、YouTubeキッズステーション公式チャンネルでも配信中なのでこちらも併せて。



そんな『チャージマン研!』ですが、先日書店を散策していたところ、このようなものを発見しました。


チャージマン研!  コミックス&トレジャーズ

チャージマン研! コミックス&トレジャーズ


まぁ当然、見つけた瞬間に手に取っていますよね。
A5版(4コマ系と同じサイズ)で100ページ少々で1700円という値段でも迷わずレジに向かっていきますよね。


チャージマン研!』コミカライズ版。
何でもアニメ本放送時、つまり1974年頃ですが、秋田書店の「冒険王」と徳間書店の「テレビランド」に掲載されていたとのこと。恥ずかしながら自分はまったく存在じたいを知らず、「そういえば復刊ドットコムで名前が挙がっていたような気も...」という朧げな記憶しかありませんでした。
実際長く復刊(?)希望の上位に食い込み続けていて、紆余曲折を経て遂に先日復刊を果たした模様です。


この『チャージマン研! コミックス&トレジャーズ』には、「冒険王」「テレビランド」掲載のチャー研がすべて収録されている他、『チャージマン研!』の解説・復刊に至るまでの経緯・放映年の検証・調査の際に発掘された貴重なグッズ・資料類も収録されています。更にはとりわけ有名な、上で取り上げた3話(コメント付のほう)の絵コンテ抜粋も掲載。資料的な価値も高い1冊となっています。


ほんの少しだけコミカライズ版の画像を。



(みやぞえ郁雄 ほか『チャージマン研! コミックス&トレジャーズ』11ページ。)


「冒険王」版第1話の扉ページの一部になります。描かれているのは研と妹・キャロン。
何故「研」の妹の名前が「キャロン」なのかとか考えてはいけません。感じるべきです。
因みにアニメだと研の髪はやや茶色く、キャロンに至っては完全に金髪なのですが、「冒険王」版では何故かどちらも純和風の黒髪。キャロンという名前に対して圧倒的な違和感が生じていますが考えてはいけない、そういうものだと思います。
研がジュラル星人と戦うときに「そうはいかぬ」とか「そんなものスカイロッドにきかぬ」とか、*1小学生にしてはやけに古風な、渋い言葉遣いをしたりするのもご愛嬌。


トーリーは意外と、というと語弊があるかもしれませんが、やや駆け足感はあるものの思った以上にちゃんとしている印象があります。第3話が個人的にお気に入りですね。


作者のみやぞえ郁雄さんはこれ以前にもコミカライズを多数手掛けておられるようですので、馴れたものだったのかもしれませんね。
因みにこの絵柄、妙に劇画っぽいなと思ったりした訳ですが、やはりというか何といいますか、その後麻雀劇画も描いたりしておられるようです。とりわけ『風の雀吾』は怪作として名高いようですな。因みに未だ現役で、現在は学習まんがを中心にご活躍されています。




(画像上:同書90ページ、画像下:同書100ページ。)


こちらは「テレビランド」版。
同じ雑誌に掲載されたものでありながら、途中で作者交代がされています。第1〜2回は嵐清孝氏、第3回以降はもりを竜氏。こちらでは研の髪に色が塗られていないです。
このご両名に関しては殆ど情報がないようですが、絵柄的には、嵐氏はみやぞえ郁雄さんほどではないですが、若干の劇画っぽさを線に感じたりします。輪郭の濃淡とかですね。
もりを氏は、手塚治虫的な線に思えます。身体を描く際の流線が滑らかなんですよね。


因みに「テレビランド」版は、1回につき基本2ページで事件発生〜解決までを描くので、演出的にはかなりアニメの『チャージマン研!』に近いです。やっつけ仕事感を存分に堪能できるのはこちらです。



そして絵コンテですが、個人的にいちばん驚いたのがここでして、恐らく最も有名な第35話「頭の中にダイナマイト」の絵コンテを担当しているのが、坂口尚さんなんですよ。


石の花 (1)

石の花 (1)

石の花(1)侵攻編 (講談社漫画文庫)

石の花(1)侵攻編 (講談社漫画文庫)

あっかんべェ一休(上) (講談社漫画文庫)

あっかんべェ一休(上) (講談社漫画文庫)


マンガの歴史に燦然と輝く名作『石の花』や『VERSION』、『あっかんべェ一休』等を描かれた坂口尚さんですね。
最初は虫プロダクションのアニメーターとして活動されていて、フリーになってからはマンガ家と並行して活動をして、次第に軸足をマンガのほうに移していった訳ですが、並行して活動していた時期に担当されていた模様。


24時間TVの『バンダーブック』の件といい、この『チャージマン研!』の絵コンテ担当といい、アニメーターとしての坂口尚さんはほんとうに修羅場を潜り抜けているのだなぁ、と感じ入った次第です。むしろ、圧倒的に時間が足りずとも完成させられる力量だからこそ、抜擢されたのかもしれないですね。



長くなってきたのでこのくらいで一区切り。
実に貴重な1冊だと思うので、『チャージマン研!』にご興味のある方は読んで損はないと思います。


といったところで、本日はこのあたりにて。

*1:みやぞえ郁雄ほか 『チャージマン研! コミックス&トレジャーズ』54〜55ページ。