脳殺♡漫画ローレンスナイト 簡易レポ
8月17日に阿佐ヶ谷LOFTで開催された「脳殺♡漫画ローレンスナイト」に行ってきました。
劇画狼さん(@gekigavvolf)がご自身のブログ「なめくじ長屋奇考録」で恐らく最も多く取り上げているのが「漫画ローレンス」で、その編集長とトークイベントをするというのであれば、期待せざるを得ない訳で。
幸いにも休みだったので、いちファンとして向かったという次第です。
せっかくなので、レポっぽいものを書いてみようと思います。
殴り書きに近いメモを元にしているため、基本的には箇条書きに近くなっています。また、細部の違いとかがあるかもしれませんがご容赦戴ければと。
来場者特典として配布された、「漫画ローレンスクリアファイル」。
中に入れるなり、上に重ねたりすることで、何でも漫画ローレンス風になるという優れものです。
個人的に推しているイラストレーター、U35さんの夏コミ新刊を入れてみたところ、構図的に予想以上にフィットしてしまい、罪悪感にも似た何かを抱いています。孔明の罠です ( ´Д`)
劇画狼さんと「漫画ローレンス」との関わり
- 2009年頃から「なめくじ長屋奇考録」でレビューを始める
- 自分のレビューが見られている、というのは判っていたものの、特にローレンス側からアプローチはなく10年くらい黙認状態
- 2019年1月に公開された「このマンガがひどい!」10周年企画「劇画狼が行く 突撃!漫画ローレンス編集部」で初めて編集部の方々とお会いすることに
- 読者層から考えて、「天晴れ!」と「喝!」しか発言しない老編集者に囲まれるのではないかと非常に緊張した
- 実際に出てきたのは劇画狼さんとほぼ同年代の方
「漫画ローレンス」について、その他
- 読者の平均年齢は70代、ときおり80代が
- 作家の平均年齢も60〜70代、いちばん若い人で50代後半、ケン月影先生は80少し手前
- 劇画誌は描き下ろしなのか再録なのか判りづらいものも多い
- ローレンスではないが、巻頭カラーを飾ったのが故人の作品、というケースが
- ローレンスは基本は描き下ろし(予算的な兼ね合いもあり幾つかは再録が含まれることも)
- ピークの発行部数は25万部くらい
「漫画ローレンス」の方針とかルールとか
- 「ローレンスは小津安二郎の世界」(初代編集長談)
- 現編集長含め、誰もその発言は理解できていない
- 編集部はローレンスの方針に沿ったものを作家に要請する
- 強姦はNG、和姦でなければ駄目
- 女性は最後は悦んでラスト、でなければいけない
- 社内の統一表記について、食べ物に関してはカタカナ表記
- うなぎは平仮名で統一、特別視されている
- 雑誌の「×月号」の表記の前には、「季節を表す漢字(1文字)」と「淫らなイメージを備える漢字(1文字)」を組み合わせた淫語が付く
- 来場者特典クリアファイルの「春交」みたいな単語
- 1月号「新年」と2月号「新春」は統一で、他の月は上記の法則に従い作成
- 鉄の掟
- 扉絵のルールについて、タイトル・煽り文・天柱の文言は基本もじる(ダジャレ的なものを入れる)
- 文字に関しては、もじらないといけない
- 且つ、他の作品とそれが被ってはいけない
- そのルールを守るために、1日掛かりで考えることもある
- 表紙は4色のローテーションなので(過去形)、本棚に並べるときれい
- 表紙のコレクターも...?
- 表紙に描かれる女性は山口百恵をイメージしている、とのこと
- 今から10年くらい前までは会社が舞台になる作品が多かったが、(メイン読者層の定年退職等に合わせて)最近は一気に減っている
- 息子の嫁、という題材にシフト
吉浜さかり作品関連
- タイトルはダジャレになっている
- 物販で売っていた扉絵集『記粘冊子』から抜粋すると、「突けっぱなし」「がむしゃ裸」「こしぬ毛」「おちょうCもの」とか
- ストーリーとタイトルは連動している(タイトルに「毛」があると陰毛の話、というふうに)
- 読み込んでいくことで、タイトルだけでオチが判るようになる
- タイトル(の元になった言葉・台詞)を言って、股間を掴んでEND
- ヒロインが「ウフッ♡」のケースも
- 何か問題が?(編集長談)
- 打ち合わせを行う際、半ば暗黙の了解でその結末に落ち着く
林昌也作品関連
- 歌謡曲のAメロ・歌い出しがタイトルになる(上に掲載した扉絵の写真も参照)
- タイトルを、煽り文で受けるかたち
- 作品をつくる際は、「どの歌でいくか」からスタートする
- 歌謡曲をベースにしているので叙情的な内容になる
- 動物がヒロインのパンツをかっ攫っていくオチが多い
- 昔は非常に描き込みが多かった
- 現在のタッチになったのは「面倒くさくなったから」らしい
冨田茂作品関連
- まったく同じ構図だが、コマ割り・ストーリーが異なる作品が多数存在する
- 詳しくは劇画狼さんのこの記事を参照だ
-
アルベガスロジック*1
井河隆志作品関連
- 作中で何の脈絡もなく、唐突に出てくる謎擬音(オノマトペ)
- 文法や綴りが明らかに間違っているのにそのまま収録されていたりする*2
- なぜそのまま通ってしまったのか
- 劇画狼さんが twitter で唐突に「SEX」とツイートするのはこれのオマージュ
- 実は「なめくじ長屋奇考録」にご本人からコメントが来たことがある
- 別名義でも執筆していることを丁寧に教えてくれる内容だったが...
- コメントのタイトルが「感謝の日日と暗殺の明日」
青山一海作品関連
- 結合部を必ず見せることにこだわりがある
- その結果、女性をまたぐ構図になる
- 男は上着を絶対に脱がない
- 下は脱いでいるのに靴を履いている場合がある(その場合、ズボンやパンツを脱いだ後にわざわざ靴を履き直しているということになる)
- 何故上着を脱がないのか:怖くて訊けない(編集長談)
- 自分の作品に対するこだわりは深い(アシスタントは使わず、一人で描いている)
- 原稿が送られてくる際、台詞もぎっちりと入っているが、文字の大きさの都合上どうしてもフキダシに入りきらない場合がある
- 青山一海節をどう残しつつ台詞を削るか、で苦慮している
ケン月影作品関連
- コピー・切り貼りの技術に注目
- この顔・表情が別のどのシーンで使われているか
- 次々と顔を重ね貼りしていくので、原画・原稿が異様に分厚く重い
- 描いたほうが速いのでは?:切り貼りじたいが楽しいのではないか
ここから後半になりますが、巻き気味で。
劇画誌における「漫画ローレンス」の位置付け
- 創刊は1983年、(1970年代後半〜80年代初頭の)劇画ブームの後発というかたち
- 初代編集長は、元々は芸文社の雑誌「漫画天国」で修行をしていて、後に辰巳出版に移り、そこで「漫画プラザ」を創刊する
- その後辰巳出版を退職するも、「漫画ローレンス」を創刊する際に一時的に戻ってくる*3
- 当時の劇画誌、「エロトピア」や三大エロ劇画誌(「劇画アリス」「漫画大快楽」「漫画エロジェニカ」)等には、エロさえあれば何をやっても...というアナーキーな空気が存在し、自由度の高い媒体でもあった
- 初代編集長は、そういう空気に対するカウンターとして「漫画ローレンス」を創刊したのではないか
- 強姦はNG、和姦でないといけないとか、扉絵のルール等も含め、事細かなルールに基付くシステマチックな方針
- とは言え「漫画ローレンス」にアナーキーな空気、或いはガロ・サブカル的空気が皆無かというと、必ずしもそうではなく、そういう空気を携えている作家はいるのでは
- 初期の桂木高志作品*4はかなりシュールな内容
- 逆柱いみり「*5作品に近い雰囲気の作品もあったり
- 実はデビュー作が「ガロ」という作家もいる
- 逆に、「漫画ローレンス」が他雑誌・ジャンルに与えた影響は?
- 全くないです(編集長談)
とりあえずはこのくらいで。٩( 'ω' )و
他にも1月に発表されたコンビニ規制(成人向雑誌の取扱中止・撤退)の話、「漫画ローレンス」が一般誌として「劇画ローレンス」にリニューアルした経緯、他雑誌も含めた今後の戦略の話、表現の自由と公共の福祉との兼ね合いの話とかもありましたが、そちらは様々な事情が絡み合いそうなので割愛させて戴こうかと(メモを取りきれなかったというのも大きな要因なのですが)。
自分の箇条書きだと伝わりづらいのですが、劇画狼さんの話術も相俟って、非常に愉しい時間でありました。
といったところで、本日はこのあたりにて。